2025.12.10
【Q&A】008 パワハラに対する対応
Q
診療所で医療スタッフが他の医療スタッフからパワーハラスメントを受けて困っています。院長としてどのように対応するべきでしょうか。

A
診療所の院長として、医療スタッフ間のパワーハラスメント(パワハラ)問題に対応することは、職場環境の維持と安全配慮義務の履行という点で極めて重要です。
2020年6月より、職場におけるパワーハラスメント防止のための措置が法律(労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法))で義務付けられています(2022年4月から全事業主の義務となりました)。適切な対応を行わないと、法的な責任を問われるだけでなく、診療所の運営全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。以下に、院長として取るべき対応ステップをまとめます。
1.迅速かつ秘密厳守の初期対応
パワハラの相談を受けた場合、院長(または責任者)は迅速かつ慎重に対応することが求められます。
⑴相談内容の聴取と記録:
被害を受けたスタッフから、いつ、どこで、誰から、どのような言動があったのかを詳細に、時系列で聴取し、記録します。
その際、被害者の心身の状態(診断書の有無、休職の必要性など)を把握します。
⑵秘密の厳守の徹底:
相談者に対して、プライバシー保護と不利益な取り扱いをしないことを約束します。相談内容を安易に外部に漏らさないよう徹底します。
⑶当事者間の分離:
事実確認が完了するまで、被害者と加害者とされるスタッフを業務上可能な限り物理的・時間的に引き離し、接触を防ぐ措置を講じます。
2.公正かつ客観的な事実確認(調査)
初期聴取に基づき、公正な立場で事実関係を明確にすることが必須です。
⑴加害者とされるスタッフへの聴取:
加害者とされるスタッフにも事情を聴取しますが、その際、感情的にならず、行為の事実確認に徹し、弁明の機会を与えます。
⑵第三者(目撃者等)への聴取:
可能であれば、客観的な情報を得るために、現場にいた他の医療スタッフなど第三者からも事情を聴取します。
⑶パワハラの有無の判断:
集めた証拠に基づき、その行為が「優越的な関係を背景としたもので、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であり、労働者の就業環境が害されたもの」というパワハラの定義に該当するかを判断します。仮にこの定義に厳密に該当しない場合であっても、業務指示、指導教育等の範囲を超えて違法と評価される言動であれば、パワハラ同様に対応する必要があります。
3.事実確認後の適切な措置
パワハラがあったと認定された場合、再発防止と職場環境改善のための措置を講じます。
➤3-1. 加害者への措置
就業規則に基づく処分と再発防止研修
➤3-2. 被害者への措置
心身のケアと労働条件の配慮、不利益な取り扱いの禁止
➤3-3. 再発防止策の徹底
職場全体での研修、相談体制の整備
4.院長の安全配慮義務と法的リスク
院長は、労働契約法に基づき、スタッフが安全かつ健康に働けるよう配慮する安全配慮義務を負っています。対応を怠った場合、被害者から、損害賠償請求(慰謝料、治療費など)を求める民事訴訟を起こされる可能性があります。また診療所としての社会的信用が失墜し、スタッフの離職や採用の困難につながります。
この問題は、院長一人で抱え込まず、社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談しながら、公正かつ迅速に対応を進めることが、法的なリスクを回避する上で最も重要です。
弁護士法人海星事務所(東京、大阪)は、医療法人の経営や医療法に精通し、日ごろから、パワーハラスメントを含めて院内の人間関係のトラブルのご相談を数多く承っています。また個別案件でのご依頼があれば、パワハラに関する事実調査に立ち会い、法的な評価に関する報告書を作成するなどの助言支援も行っております。
パワーハラスメントに関するご相談は、ぜひ当方までご連絡ください。
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